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短詩・未詩 未整理6
自分の詩を読む。
体臭を取り戻すために。
 
優秀な作家は、頭のなかに、
優秀な読者を飼っているそうだ。
 
自分の詩を読む。
失われたレシピをサルベージする。
 
優秀な読者は頭のなかに、
なにを飼っているんだろう?
 
「キティ」に話すということは、
自分に話すことなのだろう。
煙草をくわえて
火をつけないまま
二時間が過ぎた
本を読んでいた
 
感動は
きっと
健康にいい
鼻から白い息を吐く。
これは形容すると「ほわほわ」だと気付く。
 
ほわほわ
ほわほわ
 
ちょっち和む。
 
……いいじゃんべつに。
おもちゃに生まれ変わって
 
ひっぱられ投げられ汚され踏まれ折られ裂かれ暴かれ手足をもがれ眼を潰され
 
る、夢を見た。
 
   *
 
俺は誰かのおもちゃじゃない。
 
例えば、TVタレントじゃない。運のいいことに。
謝れば済むと思ってやがる
馬鹿を殴ると汚れるから殴らない
握りこぶしでひざを打つ
そして笑う 何故笑う
 
銀の星がカンカン光ってる
椅子の肘掛けがボロボロになっている
ライフルにスコープを付ける
白けないように注意して冬の息を吐く
ブルーベリーのヨーグルト
ストーブの脇の雨ガッパ
石鹸の匂うヘアバンド
ココアの残ったマグカップ
 
主人はただいまお留守です
冬ですワタシは網戸です
行き先は存じあげません
そう遠くへではないでしょう
九月に買った
十月号を
師走に読んで
課題が減った
 
ひきずるものは
影だけでいい
ひきずるものは
影だけでいい
銀じゃない磨いた鉄
騙されるもんか装置になんか
どうして誰も知らないフリなんだ
ナイフの形をした鉛筆なんだ
 
「俺を踏め!
俺を踏めよ!」
 
同じ人たちがだんだん似てくる仕組み
恐ろしいのはまず頭から
指輪を失くしたと思ったんだ
だから変われるかもしれないとも
 
「俺を踏め!
俺を踏めよ!」
 
手なんか信じないまして文字なんか
薄っぺらな紙に印刷されちまえ
知るべきことって一体何だ
明日の天気予報を明後日に見ちゃ駄目か
 
「俺を踏め!
俺を踏めよ!」
黙るべきなのに
しゃべってしまった
静かにしているべきなのに
出かけてしまった
あげるべきなのに
貰ってしまった
読むべきなのに
捨ててしまった
 
考えるべきなのに
悩んでしまった
語るべきだったのに
語られてしまった
帯びるべきだったのに
秘めてしまった
なおすべきなのに
組み替えてしまった
 
忘れてもよかったのに
手放せなかった
待ってもよかったのに
言い逃れた
書いてもよかったのに
ひとりつぶやいた
訴えてもよかったのに
述べるに留めた
 
削るべきだったのに
認めてしまった
進むべきだったのに
祈ってしまった
光るべきだったのに
反射してしまった
砕けるべきだったのに
風化してしまった
壁を殴って穴を開けたことがある
それぐらいのことはしてきた
命の安さを認めたがらない時代
自分ぐらいは本当のことを知ろうと思う
 
ひとりぶんの骨を組み合わせて
ひとり乗りのグライダー滑走する
飛ぶということと落ちるということと
痛いということは全く別だ
 
明日のにおいはパンのにおい
そんな国から手紙を書くよ
海水しかないあの辺
失くしものが浮いてる
 
太陽系を離れる探査機に
これが最後の通信だと伝えて
オーケーと答えてくれてありがとう
運がよければ一周して来いよ
鼻血が出たとき
上を向いてはいけない
血が鼻からのどに入る
 
鼻血が出たときは
ただ鼻血を流せ
 
図に表すとこうだ
スマイルだ
無表情でもいいがやはりスマイルがいい
 
夢を見た
地下室で貴族に蹴られながら
 
──ダイヤを吐け!
──ダイヤを吐け!
 
と言われる夢だった
 
   *
 
私はダイヤを吐けたと思う
 
それがいけなかったのだろう
私の価値はダイヤを吐くこと
それだけだった
 
それだけ!
あのひとは何か勘違いしている
子供は純真だと思っている
あのひとは何か勘違いしている
命は平等だと思っている
あのひとは何か勘違いしている
自分は間違っていないと思っている
あのひとは何か勘違いしている
どこか思考が停止している
 
あのひとは知らない
「がんばれ」という言葉が
ひとを殺すことがあるのを
 
あのひとは知らない
「あなたが心配で」という言葉が
言い訳に使われるのを
 
あのひとは知らない
慰めの言葉が
みじめさを強調していく様子を
 
あのひとは知らない
ほんとうに孤独な魂に
どんな言葉なら入っていけるのかを
 
あのひとは何か勘違いしている
けれどとても優しい人だった
あのひとは何か勘違いしている
けれどとてもきれいな人だった
あのひとは何か勘違いしている
言う事はいつも薄っぺらだった
あのひとは何か勘違いしている
けれど私の母親なのだ
きれいごとはきたない
 
きたないのはきたない
 
世界は、きたない
どこまでいっても
とても
とても
 
   *
 
この世界は
すべて錯覚だ
ひとのかずだけ錯覚がある
 
わたしの錯覚は
だれかの錯覚じゃない
 
惑わされたくない
 
   *
 
世界は、きたない
 
あのひとは、きれいだと言うけど
それはあのひとが
そう錯覚しているから
 
身勝手に
一方的に
 
このきたない世界で
わたしは
 
わたしの世界が
これ以上よごされないようにと
いのる
伊集院征士郎清嗣忠昭の馬鹿────!!!!
 
(全国の伊集院征士郎清嗣忠昭さんごめんなさい)
社会は、やっぱ、モラルだよ。
 
   *
 
カラオケは、やっぱ、昴だよ。
旅行は、やっぱ、ツバルだよ。
おまえさん、やっぱ、いばるなよ。
地元は、やっぱ、津軽だよ。
ひとりは、やっぱ、身軽だよ。
楽器は、やっぱ、シンバルだよ。
魂は、やっぱ、ふんばるんだよ。
顔では、やっぱ、がんばるんだよ。
おまえさん、やっぱ、いかるなよ。
最後は、やっぱ、となるんだよ。
煙草を吸うより
けむりを吐いてる方が性に合ってる
整理するのが面倒でね
この部屋にはごみ箱が四つもある
 
偉そうなことはなんて偉そうなんだろう
テレビカメラに飽きてもみたい
人間なんて発想は随分大胆
クソして寝るにはいい町だけど
誘い出して殺す
誘蛾灯の仕組み
恐ろしいことに
恐ろしくないのだ
「かき」と「こけら」ってどうちがうの?
 
……漢字の話。
太陽はいつも穴だらけだ
月面には海がある
ケーキを五等分するのは至難だ
世界を五等分するのは簡単だ
 
科学を知る僕らには科学を知る僕らの詩がある
科学を知らない彼らには科学を知らない彼らの詩がある
 
実写もアニメなら日記もアニメだ
アニマル柄は都会でかえって目立つ
賞金稼ぎが絶滅したらしい
ロマンも末期になると後片付けが大変
 
歴史を知る僕らには歴史を知る僕らの詩がある
歴史を知らない彼らには歴史を知らない彼らの詩がある
ぼくのあたまはいま
こどもの手の届かないところに置かれています
おんなじひとの言葉だとは思わないようにしよう
 
ひとはひとことづつ違うひとになる
他人のゲロを見たい気持ちと
他人のゲロにむかつく気持ちと
 
……吐くのか
おまえも吐くのか
むかつくのか
 
吐くな吐け吐くな吐け吐くな吐け吐くな吐け吐くな吐け吐くな吐け吐くな吐け吐くな吐け吐くな吐け吐くな吐け吐くな
うわさ好きで
つっこみ好きで
抜け目がなく
得意げで
知ったかぶり
ひょうきんで
軽薄で
でしゃばりで
失礼で
誰にでもためぐちをきき
本当は誰からも軽蔑されている
 
他人をネタにしすぎたからだ
卑しさが頬にも出てる
深刻なんてダサイと思って
煙草プカプカ 部屋が臭くなる
深刻なんてダサイと思って
テレビちかちか 視力も落ちる
深刻なんてダサイと思って
得意げなエッセイのページを飛ばす
深刻なんてダサイと思って
うまい棒にマヨネーズ付けて食べる
 
深刻なんてダサイと思って
皮肉と愁いは美形の特権だから
深刻なんてダサイと思って
通り過ぎるのを待ってるところ
(c) Mitsuhiko WAKAHARA