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短詩・未詩 未整理7
砂時計に
名前をつけた
お前はジョシュア
お前はレゼン
 
レゼンの砂が落ち切った
さらっと
さらっとね
 
万華鏡がそれを見ていた
どの目で
すいもんをあけたら
すいもんがひろがりました
すいもんがさきました
すいもんがそれをみていました
 
すいもんがすいもんでまっています
おすいもんでものみながら
ガソリンを燃やして
このバスは走る
軽くなったのは
誰が降りたから
お茶やお菓子まで含めて
効かなくなった薬が
六種類ほどある
 
二十数年生きてきて
 
信じなくなった言葉や
信じられなくなった言葉もある
 
水がおいしい
 
僕を救うのは
ごく地味なものか
つねに新しいものだ
睡眠が充満して
ちっそくし
僕は息ができない
体か勝手にどうにかする
 
ああ
寝るって楽だな
誰も僕の名
よぶな
 
電源を切り忘れたゲーム機
CPU対CPUが
200戦目に突入した
雨が降りました
バケツいっぱい
より多く
 
山肌が
やわらかくなりました
しみたんですね
 
もう
ぐしゃぐしゃです
 
それは
いけないことですか
溺れた
いわし
地球のニュースを見ていなかった
日本のニュースを見ていた
ただそこに流れていたから
そのことを責められるいわれは無い
 
行進曲を模した曲調の
テーマソングを聴いていた
ヒーローが現れる直前が一番いい
全員がなりきった顔をしていて
 
洗濯物とバターとハーモニカと
注文した本と嘘とデザートイーグルと
ホプキンスと論文とトリトンと
高度な馬鹿と商品タグとブルーボールと
 
ビデオ録画を失敗したんだ
それぐらいのことで泣くんじゃねえよ
地球のニュースが見たかったんだよ
ヒーローが映るって聞いてたから
『自爆説』
 
友人がいきなり
「いま何か面白いこと言ったら殺す」
と言ってきた。
(きっとこいつはいまシリアスなのだな)
と私は察知し
そっとしておいてやるべきだと知りつつ一言
「お前のその宣告が既に面白い」
と言ってみた。
 
暫時。友人は
「ぎゃふん」
と鳴いて
しゅるしゅると黒い点になってしまった。
(あ、ブラックホール)
私はしばらくそれを見ていた。
飽きると、立ち去った。
へだたっている
空と花
カラスとウサギ
学校と墓地
芋と枝
果樹園と冬
 
へだたっている
わたしとわたし
いまと
まだと
もうすぐ
へだたっている
いろいろなものが過ぎ去ってゆきますが
それは私が動いたからです
 
立ち去られたのではなく
私が立ち去ったのだ
 
   *
 
私の影が
伸び縮みして
あなたの顔にかかる
 
あなたは
影を払いのける
そして眩しそうに目を細める
冷蔵庫から出したチョコレートが
室温で柔らかさを取り戻していく
 
罪のあるチョコレートも
罪のないチョコレートも
たくさん
たくさん
 
脳は本能的に
苦味を異物と
甘みを快楽と感じ取る
 
いろいろな味がせめぎあう
この胸は決して吐かない
その壁はとても鮮やかなブルーで
はじめて見る人は何事かと思う
壁の持ち主の趣味かもしれないし
なにか記号的な意味があるのかもしれない
 
地図には壁の位置まで描かれてはいなくて
ただの壁だから住所もない
駅前で聞いてみても誰も知らない
この街に青い壁があったからって
それが?
 
   *
 
ピリピリ
嫌な予感がしてくると
青い壁に行って
もたれて
煙草を吸って
空を見る
 
壁は日によって
鉄板みたいに熱かったり
リノリウムみたいに冷たかったりして
どちらにせよ背中に馴染む
あまりの暑さのため
死者が出たという
去年のニュースを聞いてるみたいだ
懐かしいあの日が帰って来た
 
来ない
 
   *
 
手がナイフになっている少年の
寓話を読んだ
嫌な気持ちになった
ココアが甘かったので
慰めてもらった
 
むしょうにカノンが聞きたくなった
なんか今日弱い
 
   *
 
この道を通るのは何人目だろうと思いながら
僕はまた「言葉が嫌い」になっている
聞き飽きたとかああそうとか言われそうで
実際そんなことを言うのは自身だけだ
 
他人のことなんか、どうでもいいのさ
正直、自分がしょうもないというだけのことさ
公園のベンチに紙切れが落ちていた。
拾い上げると紙面にはツノの生えた寄り眼の豚の絵が鉛筆で落書きされていた。
どうしたものかと思った。何も読み取れない。
捨てるわけにも行かないので持って帰った。
捨てるのも違う気がしたので冷蔵庫に貼ってみた。
 
それからというもの、毎日一回は寄り眼の豚を見ることになった。
家族は私が書いたものだと思っているらしい。そういうことにしておこうと思う。
 
いま考えているのは、この豚に誰が何という名を付けるかだ。
誰かが名付けたら、捨てようと思う。それまでは貼っておく。
作品に題名を付けようとしていて
突然「パライソ」という言葉が浮かんだ
 
何だ「パライソ」って
 
パライソ
パライソ
 
どこかで聞いたことがあるような
 
パライソ
パライソ
 
意味がわからない
 
パライソ
パライソ
 
怖い気もする
 
パライソ
パライソ
 
親しい気もする
台風をさかいに彼女は変わる
使わなかった言葉を使うようになる
避けてきた色を着るようになる
やたらと人の目を見るようになる
小難しい本を読むようになる
音楽は聴くより語るようになる
誰彼かまわずネタにする
他人を巻き込むパワーを見せる
 
台風をさかいに彼女は変わった
嵐の日どこで何をしていたのかと聞くと
家でじっとしてましたとフフフと笑った
春が終わる
という表現を初めて聞いた
 
夏や秋や冬は
明確に終わることがある
でも春は終わらない気がする
終われない気がする
透明な文字は見えないから
透明なペンは売ってないらしい
 
透明な文房具屋で
透明なあまやどり
ソファで眠る
肉体が
 
床で眠る
夢が
 
ハードディスクで眠る
アイデアが
 
夜は更ける
たましい浮く
マシュマロマンには
ロマンがあるぜ
マシュマロマンには
含みがあるぜ
マシュマロマンには
故郷はないぜ
マシュマロマンなら
ローマにいるぜ
ミッション34。
「耳かきで耳以外の何かを掃除せよ」
制限時間十五分。難易度D。
 
……
 
マウス。合格。
目標値に達した
空調が止まる
どうせまたすぐ
うなりだすんだろ
 
一日に5分でいい
静寂がほしい
読書のために
あるいは朗読のために
 
「地上のどこにも存在しない物は
まずひとの頭に存在する」
欲しいものリストに書き足す
「・展望室のある家」
仲の良い姉弟を見た。
何かを思い出せそうで
結局思い出せなかった。
 
日曜日に地下鉄に乗ると
バレリーナの卵をよく見かける。
黒髪を後頭部に丸めていて
大きなバッグを持っているからそれと分かる。
 
何かになろうとしている
若い人達が
何かに見える。
 
のどがピリピリしはじめて
何かを思い出せそうな気がする。
何かだった頃のこと。何か。
透明な部品を
ひとつ
失くしてしまって
プラモデルが
完成しなかったことがある
 
透明な部品を
失くしてしまって
透明な部品を
失くしてしまって
スタッフロールが流れている間に
席を立ちたい
 
すべての名前が
見送ってくれてる気がするから
どこかで議論が始まっている。
私は絶対に参加しない。
絶対に。
 
   *
 
言いたいことがある。
でも言いたくない。
 
   *
 
あなたに訊きたい。
私は強いですか。弱いですか。
電子レンジがいつもとちがう音を出している
テーブルの下とかに逃げるべきなのかな これは
 
キリンがパオーンとか鳴き出したらこわいでしょ
ねぇ
意欲的な雨に驚いてみる
知っていたことを知らないふりをする
お前も大変だねなんて言って犬を揉む
きょうぼくとってもいい人でしょとわざと聞く
 
目で笑われたら目で笑う
歯で笑われたら歯で笑う
あまりに街じゅうカルキ臭いもんで
五十メートル自由形で走りたくなる
ドアを開けて出たら
頭から水をかけられた
 
……雨だった
春なのに
こたつで寝て蚊に食われてる
痛いと思う
安全のために
疲れたという
立つことに
 
究極の仕合せは
楽をすること
 
望むな何も
わななきどもたちへ
もしも願いが叶うなら
敵の作り方を教えてほしい
何に対しての敵なのか
それは作ってから考えればいい
撮らなければ
この風景は二度と来ない
明日にはもう
植物はこの姿勢をしていない
 
春だ
桜がたわわに実る
雨を見ていた
バスを待ちながら
どの車も
メッキだった
 
しっとりすると
てかてかする
 
アポロチョコレートの製造過程を見たいと思った
二倍の速度で喋れば
話は二分の一で終わる
と思っている 彼の
ボリウムは耳か
ボリウムは耳か
 
回してやる
回してやるからこつちへ来ひ
鉛筆は夜に削るもの
その方が尖る
 
卵は朝に焼くもの
だから生まれる
 
迷信に自分を囲ませて
詩的な力を貰う
 
世界の表面をみがいて
スケートで出掛ける
吹き上げる風に
上着のボタンをちぎって投げる
鉄板で作られたものを
その薄さを笑ってやるも
 
星がもしも石でできていたら
あなたなんてきっと水でできてるね
季節は光と温度で触れる
針は戸棚の奥底に眠る
 
吹き上げる風に
靴ひもをとかす栄誉を与える
指がここに五本あるんだけど
好きなのを持って行ってもいいこ
丘という地形に立ったことはない
本当は誰もそうであるはずなのに
なのに経験者の顔をしている
丘について語ることができる
 
公園の砂山に登るのとも
山岳に登るのともわけが違う
 
丘という地形に立ったことはない
本当は誰もそうであるはずなのに
それは良いものだと私に話す
どこかに丘があってそこは なだらかである
コロッケに
ソースをかける午後七時
しょうゆと気づく
十五秒前
春色の
放置自転車よこたわる
モノクロで撮る
冬の風景
(c) Mitsuhiko WAKAHARA