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短詩・未詩 未整理9
海の向こうから
日本海を飛び越えて
私の鼻先に
赤い
トマトが
着弾する
 
イージス艦にも察知できない
きっと誰もが憎まれているんだよ
「あの雲はなんにみえる?」
『水滴にみえる』
「じゃああっちは?」
『煙かなぁ』
「夢がないねぇ」
『そうかなあ』
夕暮れに
カメラを向けていつまでも
写し足りない
今日の夕暮れ
空を飛べない人たちが
陸地で畑を耕しているけれど
空を飛べる人たちが
それを遠くの国に売りに行くけれど
誰も負けてはいないのだけれど
 
空色の大巨人が
街を踏みこわさないようにと
田舎を選んで歩いてゆきました
誰も負けてはいないのだけれど
山も畑もめちゃくちゃです
どうやったらあんな風に
うまく考えることができるのだろうと
この世界を好きになれるのだろうと
息を止めて
沈殿を待っていた
 
夏になれば何もかもすべてが良くなるような
そんな願いは捨てておしまいよ
さいわいとしあわせは違うんだよ
どう違うのかは
しらないけれど
 
きのう顔に傷が出来て
これが消えるまでに何週間
何人に会えるだろうって考えてた
空からざらざら傷が降ってきて
肌をさらす全てのものを痛めつけて
逃げなさいと誰も言わなかったのは
気が小さいと思われたくなかったから?
 
火薬でできた音は激しい
地球が丸くなるぐらい計算が得意
魔法使いは食事を忘れる
いまに不老不死にも手が届きそう
 
どんな作文も番組表に及ばない
恋人ひとりふりむかせられない名前って何だ
どうでもいい一日なんてないとは思うよ
でもだったらどの日から悔やみ始める?
一円玉のデザインが
あたらしくなります
 
表は今まで通り
裏は福沢諭吉
 
だって
人に上も下もないんだろ
儀式はいらない
でも確認なら参加してあげる
決まりはいらない
でも自然となら流されてあげる
暇つぶしはいらない
でも空白の一夜があってもいい
今夜この番組を見たっていいさ
「この地図、どうして西が黒いのかしら?」
『朝、東から書き始めて、
夜になってやっと書き終わったからよ』
金が貯まらないのは煙草を吸うからだ
部屋が片付かないのは煙草を吸うからだ
気の利いたことが言えないのは煙草を吸うからだ
作業が進まないのは煙草を吸うからだ
歌が下手なのは煙草を吸うからだ
不器用なのは煙草のせいだ
不機嫌なのも煙草のせいだ
全部みんな煙草が悪い
胃に悪い肺に悪い歯に悪い頭に悪い
煙草のせいだ煙草は害だ
駅の掲示板に待ってると書いた
だれ宛でもなくただなんとなく
伸びた爪を切り離すたびに
新しい一月が始まる気がする
 
憎しみは憎しみしか呼ばないから
許すことが重要だと言った
賢者は諦めを知らなかった
愚者も諦めをしなかった
 
戦争の話さ 古い昔の
最新の あるいは未来の
指でする約束は
口でするそれよりも温かい
 
力などあっても 遠く届くほどの
敵なしの あるいは無力でも
疲れたときに見えるのは
足りなかった避けてきたもの
あの日いちばん言いたかった言葉は
死ねでも馬鹿でもなくて
出て行けだった
でも
出て行ったのはわたしだった
 
風が吹いている
いつもどんな時でも
わたしが動くと
わたしに向かって
 
背中に今
太陽が昇る
わたしとすれ違うひとが
みんな
明るい顔をしている
この空のかなたに
あの星があって
ただぐるぐると
回っている めぐっている
 
位相を変える
ふたつの船が
すれ違いざまにさよならを言う
信号灯がまばたく
 
夏が来る
手にあまるやつが
なんということだ
こいつはでかい
メートルを蹴って吟遊に行こう
僕らは軍隊 この世は戦場
愛してるってロケットが揺れる
やっと成功にこぎつけたってとこなのにさ
 
こんなつまらないビルの下敷きは嫌だ
こんな地味な死に方は嫌だ
掘り起こした奴がびっくりするような
すごい笑顔で眠ってやろう
 
メートルを蹴って吟遊に行こう
この世は遺跡 僕らは盗掘
夜を狙って袋に詰め込む
石ころ一個がパン一個
 
アニメじゃないからもちろん血が出る
神様が何か禁止をしたかい
両手のロックをはずす時がきた
馬鹿の度合いを競っているのさ
旗なんか持ってるから狙われるんだ
逃げてしまえよ 捨てちまえ
死ぬのが仕事なわけがない
戦場だもので笑える話さ
仕方がなかったと言えばいい
言えるだけ幸福だと思えばいい
死ぬのが仕事なわけがない
時代だったよと曾孫に話すさ
 
名誉も不名誉も大差はなくなる
もともと仲間じゃなかったんだよ
言う奴は言うし 言うだけ言って忘れる
憶えておけ傷ついた方が本当は強いんだって事
 
平和は死後にしか来ないかもしれない
どれだけ美しい言い訳を
俺達は恐怖に準備できるんだろう
冬が少しづつ弱ってきている
氷をあげてみたが食べようとしない
穴を掘ると途中でやめられなくなっちゃうンだ
ストイックな作業だからかもしれないな
一心不乱に穴を掘っていると落ち着く
穴を掘って何になるとか言われても気にしない
掘るのが楽しいんだもの
 
昨日は肩のへんまで掘り進んだ
危険だからこの穴はもう埋めることにするけど
死ぬ時は穴の中がいいな
卒塔婆なんか要らねえ
つまようじでも刺しといてくれ
もし私が
詩を書けなくなったら
 
とは、言わない
 
こうだ
 
もし私が
くだらない詩しか書けなくなったら
 
なっても
 
忘れようとしないでくれるかい
警戒されてしまった人のことを考える
わたしは
人間は何も求めない
そう思って生きている
 
求めるのは愚かなことだし
求められたものを与えるのは
不自然なことだと
 
期待という字は
何を待っている
 
そして警戒されてしまった人のことを考える
望むようなわたしではなかった
それはとても自然なこと
だけどいま何が悲しい
そういえばどうきゅうせいにじがじさんというひとがいてじがじさんはじがじさんだったのだけれどみんなじがじさんをじがじさんとよぶことにふまんもためらいももっていなくてわたしたちはあのころはとてもみんななかよしだったとてもとてもあのころはみんななかよしだっためがかがやいていたじかんがおしかったすべてのじかんがおしかった。
(c) Mitsuhiko WAKAHARA