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短詩・未詩 未整理11
栄養をたっぷりと蓄えたギョーザは
暖かくなると脱皮して
八ツ橋になります。
 
この時期
ちょうちょに混じって飛んでいく八ツ橋が
よく観測されます。
 
花の
あんこを集めに行くのです。
さるところによると
先週
きみは
空からライオンが降ってきて
隣の家の
鬼瓦の外れていたところに
すぽっとはまったのを見たそうだね
「ああ何だか
船のへさきのようだ」
とか思ったのだそうだね
 
くだらん
私は虹が刺さって死んだ人を見たことがある
旅先
ぼくが寝ていると
おかっぱの女の子が
口にさくらんぼを入れてくる
 
そんな夢を見た
 
饐っていたことだけ憶えている
 
頭に手をやる
髪がやっぱり伸びている
ここのところ 毎日
IMEで
自分の故郷がちゃんと出ると
うれしくなっちゃうんだな
 
自分で登録したことも忘れて
『願う』
 
今だから話すけれど
ぼくはずっとうねを美しいと思ってきた
うねとは漢字でこう書く
 
 
なんだか土の匂いがする字だ
この字を見ていると安心する
うねという音もいい
優しい気持ちになる
すくすく背筋が伸びてくる
 
今だから話すけれども
ぼくは物を貰いそれに
名前を付けなければならないとなると
(……うね)
と思ってきた
そしていつも違う名をつけてきた
 
うねが伸びていく
うねが続いていく
うねが
うねが
美しいうねが
冬がどっかに行こうとしている
勝手なもんだ
おまえのために買ったフリース
何度もまだ着ていないのに
 
ついて行きたいとおもうけど
やっぱりここでお別れだ
おまえ嫌いじゃないけれど
あんまり人にきびしくすんなよ
 
冬がどっかに行こうとしている
よくわかんないけど
海をこえて南へ行くらしい
ぷんぷんと怒ったら
怒ってることが
ばからしくなるんだろうな
ぷんぷん
ぷんすかぷん
 
擬音よ 響け
この世を 笑え
 
ねえきみ
なにぷんぷんしてんの
と言ったら
ばかにしてると思われて
ぼかぁ怒られました
エイプリルフールが土曜日なので
つける嘘が限られてしまう
さて
どうしましょ
 
よく考えたら
つかれる嘘も限られるんだな
お安くなりますという電話が
日に1本かかってくる
電話代だったりボイラー代だったり
ああ
 
全てに「はい」と答えていたら
どれだけぼくはお安くなれるだろう
震える音叉をこめかみに突き付けて
ギャングになろう バスターになろう
マグリッドに救われた事などないさ
ピーチフィズに六年漬かってる
 
片手でリンゴを握り潰せなくっても
ミカンならいくらでももぎ取ってやれるんだぜ
シードの権利が金になればなあ
名誉で薬が買える訳じゃない
 
けり転がしてぶっ飛ばして母を訪ねて三千世界
燦然と輝くあの馬鹿玉を見ろよ
星が今日もケツを降っていくぜ
岩のくせに生意気な
 
時代が変わって辞退して示談していつしか退職金
爆弾のフリすんのもそろそろ飽きたろ
鍋つかみに頼るのやめたらどうだい
これみよがしの皮手袋とか
『去年』
 
季節使いというのがやってきて
さあこの冬を飲みなさい
と言う
 
仕方なく飲んだが
頭痛がしてきただけだった
 
相手はにんやり笑って
来年になればすっきりしますよ
と言った
 
煙草なんかおやめなさい
とも
なじみの場所に行ってみたら
入り口に白いバリケードがされていて
黒いペンキで
404って書いてあったから
『ははあ、なるほど』と思って
404に電話してみたけど
誰も出ない
 
『……もしもし?』
ガチャ
「あのすみません」
『あっ、はい』
「そちら404さんですか」
『いえ、かくかくしかじか』
「あなたも404にお電話を」
『そうです。あなたも』
「です」
『404ですよね』
「ですよねえ」
『そちらはどこから』
「オーストラリア」
『ははあ』
「あなたは」
『日本』
「へええ」
『404ってなんなんですかね』
「なんなんでしょうねえ」
 
そういえばこのなじみの場所は
こんなおしゃべりをするための場所だったな
とふと とふと
青 が
あ・お と呼ばれることを嫌がって
今日から私は
ベグビーになりました
今日の十二時からは
べグビーと呼ぶように
と宣言なさいました
 
誰一人として
無視いたしました
 
いやまて
僕だけはベグビーとお呼びいたしました
気まぐれに
その日だけ
一度だけでござい
 
青のやろう無視しやがんでやんの
麦茶を半カップに
塩を少々
サイダーを注ぐ
 
とあらふしぎ
ジンジャーエールのできあがり
 
だまって出せばまず気づかれない
だまって出されてもまず気づけない
たぶんだまって
ぼくは何度か飲まされてきてる
痛めるのは心じゃなくて
胸だよと
誤字を訂正されてから
僕は胸を痛め直している
 
鳥が街を越えていく
なにか思うべきなのに
なにひとつ言えなかった
 
テレビを点けっぱなしにしてきた
家に帰る
タイマーの中には時計が入っていて
勝手に時を数えている
 
冬に噛むガムは
言い訳の味がして
それでもまた僕は
禁煙しようかと考えている
(c) Mitsuhiko WAKAHARA