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ビヨンド
こうしているあいだにも
夜が朝に移っていく
とても珍しい夢を見ている気がする
いろいろな味がする
くちびるをなめると
ドとファとシの味がする
青インクの匂いがする
暗闇の中で
耳だけになっていると
むずかしいことは
悪いことだとおもう
そうおもう
 
ビヨンド
ビヨンドのことを教えて欲しいの
ビヨンドのことを
 
鏡はどうして左右逆になるの
虹は天気なの
植物はどうやって季節を知るの
アスパラガスってどうやって増やすの
炎は気体なの液体なの
はじめて話す昔話は
古い話なの新しい話なの
未来のことを知ってるの
それはいけないことなの
数えちゃいけない数ってあるの
 
ビヨンド
ビヨンドのことを考えてたの
ときどきすごく身近に
ビヨンドを思うの
 
道はどこから始まるの
地球は丸いんだと聞いて
ほっとしてしまったけどそれでいいの
鳥はつばさで飛ぶんじゃないの
全身のばねで飛んでるの
裏も表もないの
内側と外側があるだけなの
あらゆるものには名前なんかないの
青色の赤いところがすきなの
どきどきするの
一分間に何度も震えるの
歌はどうして気持ちがいいの
わからなくても歌えるの
 
ビヨンド
ビヨンドへ行くの
今はこんな忙しいけど
いつか大きな休みがとれたら
身軽になってビヨンドへ行くの
どんなところかよく知らない
でもきっと行ってみる価値のあるところよ
近くを通ることがあったら
寄ってちょうだい
 
こうしているあいだにも
夜が朝に移っていく
とても珍しい夢を見た気がする
なにかやりかけのような
(c) Mitsuhiko WAKAHARA