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シーソーテーブル
Aさんと向かい合ってテーブルについた
そのテーブルは足がいびつで(あるいは床がでこぼこで?)
私がひじをつくと Aさんの方が上がる
Aさんがポーチを置くと 私の方が上がる
私がカップを置くと Aさんの方が上がる
Aさんがペンを置くと 私の方が上がる
私があごをのせると Aさんのポーチが跳ねる
Aさんがメモに加筆すると 私の体が浮く
私がテーブルに足をのせると Aさんの食事がふっ飛ぶ
Aさんがステーキをごしごし切ると 私の予定が投げ出される
私がこぶしでテーブルを叩くと Aさんの健康が危うくなる
Aさんが健康で長生きすると 私の精神安定が蝕まれる
私が機嫌よく話をしだすと Aさんの家族が帰りを心配する
Aさんが家族の自慢をすると 私の家族が竹やりを作りだす
私が家族に号令をかけると Aさんの家族がこん棒で応戦する
Aさんが得意の居合いを披露すると 私の戦車が出撃を決意する
私が主砲の狙いをつけると Aさんの大統領がボタンに手をかける
Aさんが大統領に許しを与えると 私の独裁者がロケットで逃げ出す
私が軌道上からAさんを狙わせると Aさんの地下シェルターは満員になる
Aさんが地下で私の悪口を言うと 私の衛星はAさんの弱点を挙げる
私がAさんの相手に疲れると Aさんの司令部は今こそ反撃と思う
Aさんが派兵をしぶっていると 私の内閣は密使の帰還を待つ
 
Aさんと向かい合ってテーブルについていた
そのテーブルは足がいびつで(あるいは床がでこぼこで?)
こっちが下がればあっちが上がる
 
私がちぢこまって座っていれば Aさんの服はとりあえず濡れない
Aさんがもうちょっと落ち着いてくれれば 私はAさんのツバを浴びなくて済むのに
(c) Mitsuhiko WAKAHARA