トップページ ≫ 自由詩 ≫ 双子の花火
双子の花火
肥満だと思っていたら
妻は妊娠していたのである
俺もパパかと思っていたら
双子だったのである
そうか双子かとほくそ笑んでいると
三つ子だったのである
ううむこれは大変だと思っていると
四つ子だときたもんだ
三つも四つも同じだと開き直ってしまうと
狙ったように五つ子だときた
まさか六つ子ではあるまいなと医者に聞くと
花火だというのである
じゃあ水中出産ですか
それとも帝王切開ですか
っていうか花火ってなんですかと詰め寄ると
夜空にパアンと花火ですよという
冗談じゃない
冗談ですよねと食ってかかると
冗談じゃありません
たまにあることです
たまにとはいっても
赤ちゃんはみんなたまのようですがときた
ふざけるんじゃないと吐き捨てて
病室へ走り妻の手を取った
こんなところはすぐに出よう
インフォーマルコンセントだ
セカンドオニオンピンだ
権利だ人権だサギだペテンだ
わあわあぎゃあぎゃあと廊下を駆け出すと
とつぜん妻が白目をむいて倒れた
どうしたお前と抱き寄せると
カッと光って
猛烈な粉塵がまいあがった
そしてバベルの塔みたいなきのこ雲が
病院からにょっきり突き出していった
ああなるほど
俺は浅学だからよく知らないが
これはたしかに花火であろう
俺は電話ボックスから電報を打った
ディア大統領
双子が生まれた
戒名 くれ
(c) Mitsuhiko WAKAHARA