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ひとつぶのみどり
いつかずっとむかし
ひとつぶのみどりをもらった
ほそいうでのさきに
ひとつぶのみどりをもらった
ちくちくして
べとべとして
つややかで
なんだかこわくて
すぐにすててしまった
 
それからわたしは
しっかりとてをあらった
 
あのみどりは
どこへいったんだろうか
 
かぜにとばされたみどり
あめにとかされたみどり
つちにしみこむみどり
かわにながれこむみどり
うみにまじるみどり
くもにうかぶみどり
そらにひかるみどり
ちじょうのすべてのほうがくから
いつどこでもわたしにおしよせる
いまわたしにふりそそぐ
ひゃくまんつぶのみどり
はだをつたってくる
めにからみつく
わたしを
そめようとする
 
いつかずっとむかし
みどりをひとつだけもらった
ほそいうでのさきに
ひとつぶのみどりをもらった
にがにがしくて
ちのようにあざやかで
どうしてもすきになれなかった
 
いまわたしのはしがふれる
ひとさらのうえに
またひとつぶのみどり
ひとくちのむごとに
みどりがわたしにながれこむ
いつかずっとみらい
わたしもくもになる
わたしもかぜになる
わたしもうつろっていく
ひとつぶのみどり
(c) Mitsuhiko WAKAHARA