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鳥が上空を横切って
山へと向かってゆきました
鳥にも予定があるのです
人間はよほど気楽です
 
あなたは知らないでしょうけど
河原が緑になりました
暖かいひとになりました
こそばゆいような気がします
 
今日はもう二度とないのだと
そんなことだけで泣けました
 
春の花ひとつ咲きました
散るのを知りつつ咲きました
くちびるのような花弁です
触れるとしっとりしています
 
春はもうすでに修羅場です
あたたかく墓の匂いです
あらかじめ全部ごみでした
ぼくは最後まで看取ります
(c) Mitsuhiko WAKAHARA