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チャンプとそれ以外
 もう13日か! しかも金曜日ですよ。出て来いジェイソン。俺のパイソンが火を吹くぜ。場所はオレゴンで決まりだな。夜はヒルトンで一泊さ。夢でトリトンと背泳ぎだ。なにせミスコンじゃ負け知らず。胸はシリコンで顔はポリゴンさ。
 わかってると思うけど意味なんかないぜベイベ。

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 オリンピックですね。明日から。って、開会式が始まってないだけで試合日程自体はもう始まってたんでしたっけ。

 いきなりお祭りに水をさしてしまいますが……プロ野球やプロサッカーを見ていてもそうは思わないのですけれど。オリンピックを見ているとね、つらくなることがあるんです。同級生のことを考えてしまってね。
 みんな一生懸命でしたよ、中学生のころ。バスケの時だけ輝いてた人も居たし、性格は最悪だけど体格もバネもバレーボール向きって人もいた。その人のためだけに廃部だった水泳部が復活した、なんて県下有数のスイマーもいました。幼稚園児のころから野球をやってきた人もいた。
 ……でも、誰の名前もテレビで見ません。彼ら彼女らはどうなってしまったんだろう。体格的に恵まれてなかったかもしれない、いいコーチを得られなかったかもしれない、でもみんな一生懸命でしたよ。

 ピアノにうちこんでいた女の子もいました。家に遊びに行ったとき、ピアノの椅子に座ったらとてつもない剣幕で怒られました、「そこ座らないで!」って。彼女にとってピアノは神聖なものだったんでしょう。音楽会ではいつも彼女はピアノ役でした。
 漫画にうちこんでた子もいました。各授業のあいま、たった5分の休み時間になるたびすばやく白紙帳を広げイラストを描いていました。部活は美術部。美術の授業ではシュールな線の、でも陰影がめちゃめちゃ上手い絵を描いていました。

 みんなどうしてしまったんだろう、と思うんです。オリンピックを見ていると。あそこにいる人と、私の同級生と何が違ったんだろう、って。
 おそらくそれは口にしてはいけない疑問でしょう。オリンピック選手に「あいつらの分まで勝たねえと許さねえ」なんて絡んでも無意味ですし。そういうことじゃない。
 ……オンリーワンなんて私は信じません、ナンバーワンにならなきゃ駄目なんです。スポーツというのはそういう世界だと私は思っています。過程はどうあれ、結果が全てです。そうでなければ納得できませんよ、負けた人々は。

 TVでサッカーやバレーやマラソンを見て、ワイワイ盛り上がっている家族の後ろで、ふと孤独を感じる私がいます。世界の頂点であるあの大舞台は、何千何万の「もしも」や「いつか」や「もう」の上に成り立っています。選手の勝利を喜んだり期待したりする気持ちより、なにやら険しい、苦い気分が胸に満ちてきます。

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 さて、今日の一枚……はお休みです。
 明日14日はいよいよ『tamatogi』です。今回は、いままでとは違う気持ちで挑めそうです。今日は早く寝ます。

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 あ、そうそう。『poenique』の『透音』に、『とてもかわいい女の子になりたい』の朗読mp3を投稿しました。……むずかしいわ、このテキスト。私の声に合ってないのかな、ところどころ不気味で気持ち悪いね。声が低いしかつぜつ悪いし。まあテキスト自体が気持ち悪いって言えばそうなんだけど。……うっとりした感じを出そうとゆっくり読みすぎたのが悪かったのかな。むずかしいわあ。
2004-08-13
(c) Mitsuhiko WAKAHARA