

どうやってたどり着いたんだか忘れたが(誰かに訊いたんだったかなあ)、赤色は砂丘の端、3番目ぐらいの高さの丘を越えたあたりにあった。こんな所じゃ誰にも見えないよ〜と思いつつ何とか到着。赤グループからスタートする他の人々も、みんな同様に迷ってたどり着いて来たらしかった。赤グループは、桑原滝弥さん・クロラさん・村田さん・花本さん・タロウさん・ましゅうさん、そして私。男6人、女性ひとり。
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まずは、景気づけも兼ねて桑原滝弥さんが『HBD』をブッた。7人という少人数での『HBD』はこれまで聞いたそれとは一味違った。「発声練習も兼ねてご一緒に!」とみんなで「HBD!」を連呼したが「今度はゆっくり〜」「今度は早く!」「休むなー!」「めいめいに!」と指示が飛びそのたび好き勝手に叫んだ。なんちゅう野人グループだ。

そんな具合で、一人づつ朗読しサインをしては旅立っていった。村田さんはNHKの取材カメラの強烈なライトに晒されながらの朗読だった。「ここで見たこと聞いたことは忘れるのが良いよ」「遠吠えだけが響くから」「風音だけが広がるから」と、クッションの効いた声が風に途切れながら聞こえた。おお、なんかの番組みたいだ。と思ってほれぼれと聞いていたら、ある程度の絵は撮れたのかNHKの人たちはそそくさと去っていってしまった。ゼヒなんか読んでくださいよー! とみんなで求愛してみたが照れ笑いを浮かべて行ってしまった。まあしかたないやさ。
他のグループから旅立ってきた人からの提案もあって、赤グループはもう少しわかりやすい場所に移動し、朗読リレーを続けた。花本さんの「我々はほてったうなじにフェチる!」「我々は夜の鳥取砂丘で詩を叫ぶ!」と叫ぶ詩はとてもユーモラスで、若くて、楽しかった。ましゅうさんの声は、ちょうどそのとき風が強まっていて聞き取りにくかったが、。自分の耳に手を添えてみたら風音が防がれ声が耳元で聞こえるようになった。意識でも姿勢的にも「耳を傾けて」いた。いいなあと思いながらひっそり聞いた。
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朗読が終わると「お前大好きだ!」と背中を叩かれた。みんなテンションが上がって仲良しになってしまってらあ。サインをし、手を振られて、カバンを背負って赤グループを離れた。
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その後、私は緑、オレンジ、黄色と移っていった。どうやらもっとも騒がしかったのが赤だったようで、他のグループはしっとりと砂に円座しての朗読が多かった。私はその場の雰囲気に合わせて緑で『短詩(3つ)』を、オレンジで『イルミネイション』を読んだ。遠くのグループから声が響いてきて干渉していい感じだった、と感想をくれた人もいた。
タスケさんが何やら叫んでいたのがすごく気になった(通しで聞いてみたかった)。古溝さんの『モザイク』は、砂丘という非都会的な風景で聞くとかえってイメージが湧いて面白かった。緑グループでは、失礼を承知で砂に寝そべって聞かせてもらった。砂を枕に寝っころがると、視界には空しか映らない。風は相変わらず強く、雲はどんどん流れていった。砂はひんやりとしていて心地よく、ちょっとぐらいなら埋まってみたい気がした。
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はじっこの黄色グループで「もう一個ぐらい聞いてから読んで動こうかな」とくつろいでいた時、班長さんの携帯電話に連絡があり、朗読は終了となった。ああ、もうちょっといろんな人の詩を聞いてみたかったなあ、と思いつつ最も高い砂山を登攀し再集合した。

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その後、砂山の頂上から降り、砂丘を横切り階段を降りて、駐車場に戻った。砂丘を横切るとき、私はふと思いついて、懐中電灯をポーンと前に放り投げてみた。それは発行したままくるくると回転し砂にサクッと着地した。私は懐中電灯を拾い上げ、また前方に投げた。きれいだなあ、面白いなあ、いま俺こどもみたいだなあ、と思いながら懐中電灯をまた拾う。その時、懐中電灯のそばにストローを折ったような、プラスチックの破片があった。ゴミだなと思ったのでついでに拾う。斜め下、足元を見ながら歩いていると、またゴミがあった。ひとつもふたつも同じだ、とまた拾う。しばらく歩くとまた破片があった。仕方ないので拾う。なんだかなあ。まあいいや。ゴミは駐車場のゴミ箱に放り込んだ。
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バスに乗り込み、新生館に戻る。帰りも、車内はタスケさんの独壇場だった。しかし今回タスケさんの傍に座っていたのは花本さんではなく桑原さんだった。桑原さんは疲れてたのか、根がまじめだからか、どう相手していいのか困ってる風だった。
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新生館に帰還し、まもなく3階の宴会場で宴会が開かれた。ビールを飲みつつ、夜食をついばみつつ歓談。でもみんなまだテンション高いからピッチが速い。話してなきゃ飲むし、飲んでなきゃ話している。騒がしくて楽しい。

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部屋にあったゆかたに着替え、バスタオルを持って温泉に行った。階段を下りて少し歩いたところで「ゆ」ののれんを見つけ、おおここだここだ、と入ろうとしてふと見回すとそこは女湯だった。危ない危ない、入る前に気付いて良かった。

湯から上がって脱衣所でゆかたの帯を締めていると、ガラガラガラッと入口の戸が開き花本さん(じゃなかったかな。勘違いしてたらごめんなさい。男性)が入ってきた。「おわああ。幽霊みたいですよ」と言われ鏡を見ると、髪は濡れて垂れ、肌は白く、両眼はピンク色、唇がダークレッドというなかなかデンジャーな配色だった。「ああこりゃあ確かに幽霊ですね」と同意し、ごゆっくり、と声をかけて私は脱衣所を出た。
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2004-09-30