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短詩・未詩 未整理8
仕方なくこんなところにまた来てしまう
一杯のスープすら施して貰えない
物語が終わった後の主人公の気分
もうどうでもいいんだろ私のことなんて
 
負け方も逃げ方も学ぶ機会がなかった
冷たい末端 熱くなりすぎた心臓
こうであってほしいという希望を読み込まされる
人間が恐ろしいと教えてくれれば良かったのに
 
憎しみと もういいんだとの間を揺れる
この心は誰のもの 私以外のもの
与えられた楽譜を弾く私はここに居ない
選択肢はいつも二つ 選ぶか選ばないか
 
ラベルのないテープを流す
誰の声でも血の泣き声
一歩で蟻の一生を踏み越す
自分の影を踏み自分の影に寝る
誰かがぶっ放すショットガンの消滅点に
立ち上る夕日にサンバイザーは要るか
ブラックライトに反応しがちな
左ヒザ中心にヘッドのロック
 
アンチのアンチも敵の敵も敵
いつまでも同じことしか言えないロールプレイ
スタッフロールでストック底尽き
正拳突きなら腰だめ据え打ち
 
ライフラインを絶たれたこのモンスターに
ビッグビッガービッゲストなビスケットは要るか
バスケットにはタオルケットそして
元デイドリームビリーヴァーを片手ぶん
 
ソリッドなバレットでリキッドをクイット
いつまでも同じことしか言えない虹色オウム
悦に入って指摘して匿名匿住所
逃走は足の速さじゃなくタイミングで決まる
黄色い砂に
青みがさして
砂丘はいちめん
緑です
 
砂丘の端には
林があって
緑ではなく
黒でした
寝よう
そういう意味じゃなくて
空を見るのに最も楽な姿勢は
仰向けだ
地球にもたれ
脱力して雲を見ていると
海抜や標高から自由になれる
明日の予定なんかどうでもいい
なんなら本当に寝てしまっても構わない
そういう意味じゃなくて
寝よう
そういう意味でも
夢を見るのに最も楽な姿勢は
仰向けだ
パンサーマークのシールを貼って
ドライブに行こう旅行に行こう
中指の使い方を教えてやる
中腰の弱さを笑ってやる
 
ライターのツメに火が放たれてる
フライパンが飛ぶ金曜日だろう
ペンを握ってそれからどうする
尖端から流れるこの手の軌跡
 
グリッターグラスファイバーグローリー
インファイトインプラントインマイハート
チェッカードテックインチェインチケット
ブリリアントバイブブレイブビリーバー
 
商店街は悲しいかい
パチンコパーラーは楽しいかい
スタンプを集めよう何も貰えなくても
得した気分を貯金すればいい
 
累積していく時が地層に着色する
遺跡じゃないのは生きている場所だけ
ソードマンの生き方を教えてあげる
カードの切り方を痛感しに行こう
 
フィリップモリスが青空に映えてる
リアルなインチキが風にはためく
縦笛をみつけた何なら吹ける
空間に飛んでけ肺の二酸化炭素
ポケットティッシュをもらったんだよ
白くて、ぎゅっと握るとふかふかしていて、
ぼくがいつか困ったときに役立ってくれるんだ
 
21グラムぼくは重い
同情や後悔のような曖昧な感情を
正しいこととは言って貰えなかった
花にも毒と薬がある
それはまた別の話だ
 
夢の多い子供だったが
一番の夢は切り絵師になることだった
ハサミひとつで海外公演
得意技は熊だ
 
フルーレの音がする
きっと耳鳴りだろう
誰にも聞こえない
心の中に風が吹く
 
名付けないでそのままにしておいて
間違いでも気違いでもいい
これが旅なら無線は要らない
地形の起伏にただ沿っていく
人間の形は五つに分かれるそうだ
その先へその先へと落ちるまで走るんだ
本当のエースは老後を恐れないんだ
この前に戦死する予知夢を見たんだ
 
木の枝に林檎がぶら下がっている
呪いみたいに夕日みのりの赤熱
腐りきる前が一番甘い
だったらお前がひとりで食べろよ
 
青に右手スプライト飛ばす
左手は盾を握り締めたまま
朝にバスター宵闇に鉄爪
予備のボタンが本当のボタン
 
劇場チラシに鴉の落書き
金色のペンそして銀色のペン先
封筒に詰めた乾燥悪魔
右目が左目よりわずかに早い
 
鉛筆の先で示せるそうだ
磁力を帯びてる気球に揺られて
ドアを開けるんだ重力に逆らって
あの陽を落とすなその手のひらから
何人の人が旗を振ったのだろう
パサパサという音を残して行ってしまった
地面の影は人型だったけれど
全員が生きていたとは限らない
 
人じゃない人の話も結局人間の話だったから
僕はそれ以上興味を持たなかった
風の中 精霊の声に耳を傾ける
ささやいてささやいて乱してくれるそうだ
 
亜人の気持ちは亜人にもわからない
自分のことしか彼らは知らない
相対速度じゃ自由と呼べない
わかっていても観測者を求める
 
人じゃない人の話は人間の揶揄だったから
僕はそれ以上興味を持てなかった
水の中 精霊の声に耳を澄ます
狂っても狂っても自然だそうだ
最後の煙草に火を点ける
これを吸ったら泥棒になろう
きっとなろう そうしよう
誰かに聞いてほしくて深夜2時
 
テレビをつけっ放していた
そのことにも気付かないくらい
退化している 鈍化している
どんな顔して花を育てる午前2時
 
煙草の自販機は深夜は停止中
コンビニまで行くには雨が邪魔
じゃまだどけ ひきころすぞ
かぜをひいてのどを痛める真空2時
詩の女神
とかいうのがやってきて
俺が書き物をしている横で
「ああだめ! そんなところで改行しないで!」「改行しないで!」「改行しないで!」
とわめく
 
俺は
無視して
改行する
改行する改行する改行する
する
 
じゃかましいわいボケ
ラジオドラマの
優しい声が
土曜の夜に
しみていく
 
明かりを消して
目を閉じて
ヒータの灯を
まぶたに当てて
 
頭のなかでは
今夜は満月
頭のなかでは
海は凪
『いたむ』
 
傷んだ野菜を
ぶつけて遊ぶ
まつりに行きたい
ジャガイモを握って
 
肉を噛みながら
血色よく
すな と呼べば
全ての砂がこちらを振り向く
浜で
僕は邪魔で
捨てられるような物も持っていなかった
 
どんなステップを踊っても
最後には同じポーズになってしまう
どんなしりとりを始めても
最後はおやすみで終わる
木製の
古い船が浮かんでいる
船底に穴が開いていて
人間ひとりを乗せる浮力はない
 
木製の
かつて船だったものが浮かんでいる
猫が飛び乗ったが
沈んでしまった
煙草の本数が増えて
家族が心配している
私が火を持っているのが
怖いのだ
 
雨が降るので
出かけるつもりです
傘をさして吸う煙草は
ちょっとした悟りの味わいがあります
ちゅりんという音を発明したので
これを手紙につかいたいんだよ
 
でもそんな音を出すものが
見つからないんだよ
 
ちゅりん
ちゅりん
ちゅりりりりりりりん
『とどまらぬ紫煙』
 
一本の紫煙の絹で結ぶ口
 
吸う側は黄煙だとは知らぬ甥
 
灰皿が見つからなくて子供組
 
吸い殻を拾って吸える鉄面皮
 
火の玉が近付いて来る鼻の先
 
指先に低反発の紙の筒
 
存分にマッチが擦れる隠れ里
 
吐きながら悪にも成れず店の隅
 
空き箱の「HOPE」の文字の苦い青
ぴーんとしている
ぴーんとしている
背中
ぴーんとしている
虫歯
ぴーんとしている
飛行機雲
ぴーんとしている
カレンダーの
ゴシック体の
「11」
ちくちくと痛かった
トゲの痛みが失くなった
抜けた訳ではなく
刺さったまま
 
傷を傷と呼ぶ
意識的な時期が終わる
由来を知らなければ
ただの染みに見えるはず
 
ちくちくと痛かった
その場所をよく触った
それで痛みが消える訳でなく
ただ確認のため
 
きっかけや理由の無い
物語は忘れられやすい
皮膚の下に褐色の
トゲが透けて見えても
使われなくなった言葉が
辞書の末席で
出番を待ってんだ
寝てんだ
 
夢とか
ねぇんだ
 
使われなくなった言葉が
たとえば
思いつかねえけど
たぬきの絵を見て
たぬきの話を読んだ
絵本だったから
たぬきが主役の
 
きつねの唄を聞いて
きつねの踊りを見た
映画だったから
きつねが主役の
 
ひとの何もせずに
ひとの何も知らなかった
休日だったから
ぼくが休みの
『唐獅子』
 
からいししとう
からいし死闘
からイシシとう
唐い獅子とう
ずたずたの
子供
めろめろの
子供
ぎらぎらの
子供
げろげろの
子供
ズタズタの
ズッタズタの
ズダの
ズの
子供
ガキ
 
花束で
表せるんなら
愛を
(c) Mitsuhiko WAKAHARA