壁に囲まれて見る夢は
羊についての数え歌
枕が変わると眠れない
罪をなすられる後頭部
記憶の一部と持ち歩く
駅前で買った伊達眼鏡
何を透いて見る為なのか
紫外線のないスクリーン
カーテンと窓と入口と
全てを閉ざした室内で
換気ファンだけが外界の
静かな光を漏れてくる
魂の揺れているさまを
水面に映しだしながら
皿で咲いている一輪の
すがすがしいけど寂しさも
*
遠くの景色のよく見える
非常階段に腰かけて
きっと来る夏を考える
何かあるはずと仮定して
太陽を見つめ続けると
目の奥がくっと痛くなる
それは眼球の筋肉が
胸に逆らって縮むため
あらゆる無意味な会話から
自分の名前を聞き分けて
距離を確かめて飛び越える
それが賢明と身に付けて
感謝されるより感謝する
そのほうがきっと幸せで
受け身でもらってきた雨で
不足なく花はまた香る
*
時だけが早く過ぎていく
海のある星の一角で
幻の中に居たような
感想を残すダイアリー
小さな疑問を寄せ集め
一冊の本にまとめると
なぜだか自伝になりそうな
時効を迎えた少年期
手の甲に星を書き込んで
魔法を気取っていたみたく
刺青を入れて髪を染め
自分の気分を盛り上げる
鏡の中身を変えながら
2ミリずつ明日を演じ切る
花束を抱いて歩くたび
肩に受粉して染みが付く
*
形から入る性格を
直せないままに髪は伸び
どんな魂を着飾って
誰のものまねに終始する
目的を持っている振りで
場面を手段と割り切って
生きているものを利用して
死んだものたちを調理する
割りばしを縦に裂くたびに
人殺しだって自覚する
愛はいくらでも食べられる
菜食主義者に憧れる
化学物質とニコチンで
かっさばいて見りゃ腹黒い
しずく型をした薔薇色の
ひとひらは軽く薄べらい