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Hyper Eater
先生によって
言ってることが違う
本によって
書いてあることが違う
人によって
考え方が違う
なにが
ほんとだ
 
ぼくは
からっぽだ
人は誰しもまっしろな紙を一枚もっている
ぼくは探した
紙に書くべきことを
 
ぼくは神様を探した
ぼくは必死で神様を呼んだ
神様はぼくに答えなかった
ぼくは神様を信じなくなった
ぼくはロックを探した
ロックは探せば探す程どんどん薄まっていった
掃除すれば掃除するほど部屋が汚れてゆくみたいに
大切なメモがどこかに紛れ込んでしまうみたいに
ぼくは正義を探した
そんなものはなかった
ぼくは美しさを探した
なんでもいいと思った
ぼくは疲れた
ぼくは休める場所を探した
ぼくは愛を探した
ああ
愛なら知ってる
塩かけて食うと旨いやつだ
 
   *
 
── Hyper Eater !!!!
 
   *
 
神様を食って神様になる
ロックを食ってロックになる
詩人を食って詩人になる
人間を食って人間になる
鬼を食って鬼になり
文化を食って文化になる
明日を食って明日になり
時間を食って今日になる
 
主役を食う脇役を食う
客を食う設備を食う
場所を食う手持ちを食う
電池を食うメーカー保障を食う
家電を食う服を食う下着を食う画材屋の絵の具を全色食う
パンチを食うキックも食う見たこともないような技を食う
スペシャルサンダースマッシュフラッシュデンジャーリボルグネイキッドアーマードストライクを食う
血を食う肉を食う野菜を食う
魚を食う牛乳を食うブルーベリーを食う
クジラを食うゾウを食うダチョウを食うキリンを食うイモリの黒いのを食う
オオサンショウウオを食うパレオパラドキシアを食うミネラウスモルフォを食う
レッドドラゴンを食うレッドドラゴンの卵を食うレッドドラゴンのへそのおを食うレッドドラゴンの子を食うレッドドラゴンの巣を食う最後のレッドドラゴンを食うレッドドラゴンの歴史を食う
森を食う山を食う海を食う
味わい深い季節を食う
春を食う夏を食う
柑橘系の匂いを食う
秋を食う冬を食う
ちべたいツララをがしがし食う
土を食う
横顔を食う
宝を食う
栄養を食う
毒を食う
霞を食う
静寂を食う
 
食う
 
   *
 
どっかのだれかが
税金を
食べている
税務署が
社会人を
食べている
サラリーマンが
ヨーグルトを
食べている
ビフィズス菌が
腸内成分を
食べている
健康が
病院を
食べている
活字が
空欄を
食べている
雲が
空を
食べている
夕日が
しじまを
食べている
予定が
日曜を
食べている
窓を
カーテンが
食べている
カレンダーが
壁を
食べている
壁が
カレンダーを
食べている
きみが
ぼくを
食べている
ぼくが
きみを
食べている
食べている
食べている
食べている
食べている
 
   *
 
── Hyper Eater
 
   *
 
ぼくは探した
紙に書くべきことを
探し続けた
ぼくはふけた
でも紙はまだ白いままだ
 
探し方が悪かったのかもしれない
と思うこともある
だけど
 
すべては腹のなかだ
 
味は忘れた
ごちそうさま
(c) Mitsuhiko WAKAHARA