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はさまっている
はさまっている
96ページと97ページの間に
はさまっている
男と男の間に
はさまっている
パンとトマトの間に
はさまっている
前歯と犬歯の間に
はさまっている
青木さんと青川さんの間に
はさまっている
濡れている
つぶれている
やわらかく
常温の
はさまっている
指先と爪の間に
はさまっている
花田ビルとメゾン大森の間に
はさまっている
ぶつかることなく
逃げもせず
いどんだこともない
月と地球の間に
はさまっている
科学と生活の間に
はさまっている
趣味と実益の間に
エロ画像と書き置きの間に
ラブとお金の間に
ぺらぺらの
ぐちゃぐちゃの
あいまいな
かつての
似た
異質な
運命の
産み落としの
はさまっている
人魚と天馬の間に
はさまっている
辞書と鈍器の間に
はさまっている
視力と想像力の間に
自由と戦力の間に
右翼と左翼の間に
肋骨と背骨の間に
はさまっている
村上春樹と村上龍の間に
はさまっている
運転席とドブスの間に
はさまっている
右乳と左乳の間に
はさまっている
12月と1月の間に
あせていく
失われてしまう
圧縮されて
まずは色から
ドライフラワーは永遠に咲く
押し花は永遠に死ぬ
物語は人の口で
うわさは1日
聖書とPLAYBOYの間に
はさまっている
タンスと壁の間に
はさまっている
マクベスとマグリッドの間に
監獄ロックとカルメン'77の間に
マリオとキノコの間に
echoとわかばの間に
はさまっている
窓と扉の間に
はさまっている
新聞と折り込みチラシの間に
はさまっている
クリームとバナナの間に
はさまっている
友人と
友人と
友人と友人と友人と友人と友人と友人と友人の
わずかな隙間にすべりこんでいる
下着と生理用品の間に
歯と歯ぐきの間に
黄色い悲鳴と青い尻の間に
はさまっている
アイボと始祖鳥の間に
読売新聞と琉球新報の間に
ドとファの間に
ミミズとオケラの間に
愛と勇気と友情と勝利と努力と熱血とその他大勢の間に
きのうと今日とあしたとあさってと来年と去年と誕生日と命日の間に
はさまっている
おい手を伸ばせ
無視するな
誰かひっぱれ
俺をここから出しやがれ
アトムと
アトムと
アトムとアトムとアトムとアトムとアトムとアトムの間に
はさまっている
マイクと発電所の間に
コンビニとテレビ局の間に
老人ホームと国会の間に
引力と遠心力と無気力と無関心と興味心と野暮と迷惑と災難と知識と欲望の間に
はさまっている
みかんと岡山の間に
はさまっている
ノートと下敷きの間に
はさまっている
靴と地面の間に
はさまっている
学生手帳とハンカチの間に
はさまっている
ヨネとトミの間に
はさまっている
タッキーとツバサの間に
はさまっている
前略と中略と後略の間に
はさまっている
楽太郎とこん平の間に
ウシとカエルの間に
早稲田大学とバカ田大学の間に
菓子箱と上げ底の間に
ビンタと捨てゼリフの間に
はさまっている
紙一枚
の薄さで
やられてしまう
押し潰されて
噛み砕かれて
はさみこまれる
海馬と大脳の間に
23時と2時の間に
大馬鹿とド阿呆の間に
後悔と諦めの間に
若さと暴走の間に
夢と朝の間に
女神とジェットエンジンの間に
前輪と後輪の間に
抵抗とサージアブソーバの間に
夕日と地平線の間に
カラスとペンギンの間に
入院患者と転校生の間に
目とメガネの間に
くちびるとえくぼの間に
夏の暑い日も野ざらしで
冬の寒い日は肩をすくめて
チョモランマとエベレストの間に
若原と若林の間に
ロックとパンクの間に
ビームとレーザーの間に
宇宙と世界の間に
一瞬と永遠の間に
鳥と影の間に
はさまっている
ふさぐ
赤と紫の間を
西と東の間を
慈悲と無慈悲の間を
ふさぐ
埋める
隙間なく
浸透する
摩擦力だけで
はさまっている
落ちず
のぼらず
引っかかっている
こすれている
熱を帯びている
だんだん
くたびれていく
だんだん
こぼれていく
だんだん
乾いて
軽くなり
風にさらわれ
見えなくなって
はさまっていたことも
忘れていく
だんだん
だんだん
だんだん
忘れていく
例えば
いただきますとごちそうさまの間に
何も
なくなる
遠い
はじめましてとありがとうの間に
(c) Mitsuhiko WAKAHARA