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浸透
若かりし日の手袋には
もうこの手は馴染みそうにない
肌のように着こなせたのは
ある錯覚かもしれない
あんなに一緒に殴った冬
粘土の感触を楽しんだ夜
血を赤くするための努力
白くなっていった心
泥の足跡を消したくなかった
全てはいつか大切になる
いつか必ず弔ってやる
楽しみだったのに
季節が勝手に除霊を進めた
呪われたから強くなれたのに
静かな奇跡が烙印を洗い
邪悪な魔力が失われていく
(c) Mitsuhiko WAKAHARA