白く伸びた飛行機雲 先端が光っている その真下でぼくは
むかし飼っていた鳥の 話をしようとしてやめた
風をかき回して時間が流れたら
新しい顔も浮かぶかもしれない
洗い場の石鹸みたい やさしかったと思う
幼かったからと言いかけて また慌てて黙る 曲線を描く
近道をしようとして 約束はしないことを決める
自分の手のひらに目が落ちてしまう
読みかけの小説から身を引く
あんな事のあとでは 作り話は嫌いになった
瞳を閉じて祈る 空のあいたところに 夏雲を下さいと
首から垂れた汗が 襟から胸へ入っていく
ぼくの作った雲が
浮かんでは消えていく