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影の翼
ある日ふと地面に視線を落とすと
僕の影に
大きな翼が生えていた
 
僕は背中をふり返ったが
当然そこには翼などなかった
だが影は背中をふり返って
翼を眺めていた
 
僕は
もしやと思って飛んでみた
足で地を蹴って垂直に
はたまたスキップするように平行に
あるいは助走をつけて幅跳びのように
思いつく限りの方法で
僕は飛んだ
しかし僕の体は浮かなかった
 
そしてまたふと地面を見ると
僕の影から
翼は消えていた
僕は首をかしげた
影がすこし傾いた
 
そのとき
さっと視界を何かが横切った
あわてて目で追うと
大きな鳥のような
蜃気楼のようなものが
遠く
地面すれすれを
滑空していくのが見えた
 
僕は見とれていただけだったが
影は小さく手をふったようだった
(c) Mitsuhiko WAKAHARA