植物園まで
はちの子を送っていく
バスは回ってこないから
自転車でまいあさ運んでやる
自由ぐらい自分で守れと
けさ見た夢の話をしながら
ペダルをこいで坂道を登る
はっぱの裏に書いてあることが
大人の私にはもう読めない
石橋で牛車とすれ違う
かごの中から漏れている
香の匂いにちょっとよろめく
息を止めて通り過ぎてから
はちと顔をみあわせて笑う
いつのまにか雲がひとつくずれて
そのぶん空が広がっている
平原を抜けて自転車をとめる
おはようおはようと先生方が頬笑む
さあいってらっしゃいと
私ははちの子にかばんをかける
はちの子はこくりと頷いて
まっすぐ植物園に入っていく
花の間をすりぬけてゆく
はちのスモックが花粉で汚れる
土に帰るまでが遠足です
それでいいと私は笑う