全身に
熱く燃ゆる血たぎらせて
我 一生を
脱獄に賭す
たわむれに
古き絵本を開き見ぬ
そにクレヨンの
線もなつかし
親の無き
かの青年のその胸に
脈づきし血は
誰のものかも
交番に
轟き渡る喧騒の
とりとめもなく
夜は老けゆく
鋼鉄の
壁を五十把 くりぬきぬ
あきれ おみそれ
石頭めが
絵葉書に
切手 逆さに貼りてまい
「あいや御免」と
追伸を書く
電線に
とまりし鳥に雷撃を
喰らわすがごと
列車 過ぎ行く
金塊を
積み荷し船が沈むごと
好物を食い
二度と目覚めん
ガス銃で
なんじ撃てども死にはせぬ
弾の痛みを
味わうがよし
ものもうす
我に課されたこの罰は
いかなる罪の
なんの刑とぞ
泣くもよし
苦しむもよし永遠に
犯せし業を
思い出すまで
鏡みて
髪よ伸びよと思う日は
ひげを剃る手も
ぴたり止まらぬ
大願を
秘めしその胸 赤く染め
言葉 少なに
うなだれし友
夏のシメ
うだる汗水 滝のごと
浮かぶ涙は
粉雪のごと
《本日は
晴天なり》と全軍に
声を荒げぬ
無線技師あり
生い立ちを
ドイツ語などに訳すれば
まるで偉人に
なった気味なり
八百の
神とあまたの霊のうち
我を救いし
ひとつ選ばん
人形を
我が子のように抱き締めし
かの娘もいまは
二児の母なり
いずこより
清き桃李の香りして
いつしかに
好く好かれるに臆してし
病み心して
独り好むる
この吐き気
我に及ぼす元凶を
ひとつ残らず
根絶やしにせよ
油虫
頭 潰され息も無く
足は蠢き
ハラワタは白
夜にすら
たじろぐ程の考えを
持ちて目覚めぬ
朝もあるけき
砂浜で
君と交わる夢を見た
君と会う日は
何か気まずし
我の名と
同じ名前の容疑者に
なにかしらなる
哀れみも沸く
綴じられし
歌と呼ばれる かたことは
語り尽せぬ
無言の果てに