眼鏡 取り
笑みて見せなよ 乙女なら
全身に
百万本の刃が育つ
傷つけぬべく
全てサビさす
真夜中に
映るテレビがどこもなく
コンポのラジオ
初めて使う
君が飲む
薬の量が増してゆく
僕が代わりに
飲みてやりたし
目がさえて
眠れぬ夜の病棟は
足音 響き
怖いとふ君
夢でなら
今でも君とよく会うよ
僕は老いても
君は若くて
幾つかの
夢の終わりに見た夢は
「なにゆえに
歌を読むるか旅の人」
『歌は久遠に
残るゆえなり』
子を産まず
死する全ての生き物を
男と呼べば
潔ぎよきかも
目も見えず
耳も聞こえず もの言わず
風の香りを
嗅ぎ分けし石
本物の
ふりを続けて百余年
名画モナリザ
肩もこるかも
血も吸わず
我の眠りを さまたげる
それが仕事か
そこを飛ぶ蚊よ
「老い先は
長くないぞ」と告げられて
かくて八年
今日も快調
(明日にぽっくり
いけば笑うが)
平皿に
蝿がとまりて平手うち
蝿は飛びたち
皿は砕けむ
我の絵を
「平凡だな」で片づけし
君の顔でも
書いてみるらむ
「こんなこと
考えたやつはいないぞ」と
思うことなら
だれにでもある
勇ましく
ツカを握りて出たものの
背から斬られし
剣客の事
「君の詩は
ボクに言わせりゃゴミだね。」と
我に包丁
握らせし人
湯をあがり
見れば吾の下駄みあたらず
我はどの下駄
履いて帰らむ
真紅なる
絨毯を裂き身に纏い
鬼を名乗りぬ
青の時代に