あるところにシッパイマンがいた。シッパイマンがすることは何でも失敗する。
あさ起き上がろうとすると本棚が倒れかかる。出かけようとすると道に迷う。橋が落ちる。少し休もうと立ち止まると野犬が襲ってくる。帰ろうとするとカギをなくす。家が燃えている。まったくもって全てが思い通りにならない。
今度こそうまくいく、と信じ、シッパイマンはめげずに立ち回るのだが、それもことごとく失敗する。
挨拶しようとすると、知らない人だった。買い物をしようとすると財布が無い。うりきれ。切符を買おうとすると機械が壊れる。風呂に入ろうとすれば水風呂。断水中。
喜劇的なくらいに非運。それがシッパイマン。
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「どうしてわたしは何をやってもダメなんだ」
シッパイマンは悩みこんだ。だが今までの経験から、悩んでも考えてもまた失敗することは分かっている。
「では悩まなければどうなるんだろう? もしかして、全てうまくいくんだろうか?」
しかし悩まないためにはどうしたらいいのだろう、とシッパイマンは悩んだ。さっそく悩まないことに失敗した。
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「もうどうにもならない。こういう星の元に生まれたとしか思えない」
シッパイマンは観念するしかなかった。
「そうだ、失敗するもんかと思うから失敗するのでは。もう何もかもに失敗すると思ったらどうだろう。失敗することに失敗できるんじゃないか?」
よし、失敗するぞ。もう失敗の連続だぞ、うまくいきっこないぞ、とシッパイマンは意気ごんだ。
シッパイマンはまず宝くじを買ってみた。いままで当たりっこない、と思ってきたから、気にはなっていたが買うのを避けてきたものだ。
「当たらない、絶対に当たらないぞ」
そう言い聞かせながらニコニコとくじを買った。
*
1週間がたち宝くじの当選結果が発表された。くじはひとつも当たっていなかった。
「ああやっぱり……ん?」
シッパイマンは気付いた。
「あれ? わたしは当たるように願ってたんだっけ? 当たらないように願ってたんだっけ?」
シッパイマンはいよいよわけが分からなくなった。シッパイマンは自分を試すことにすら失敗した。