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モグラと太陽
 地平線にかかる太陽が呟いた。
「私がこんなに照らしているのに」
 呟きに気をとめたモグラが訊ねた。
──どうしたのだ、おまえらしくもない。
 
 太陽は傾いたまま語った。
「毎日私がこんなに照らしているのに、誰も感謝してくれない」
 モグラは答えた。
──そうか、それがどうした。
 
「誰も私の重要さを分かってくれてない。昇って当然だと思ってる。備品か何かだと思ってる」
 モグラは苛立ち始めた。
──おまえ、だったら何なのだ。
 
「私だってタダで光ってるわけじゃないんだぞ。私の贈りものに対して、みんななにか言うことがあるんじゃないのか。お世辞のひとつぐらい言ってくれてもいいんじゃないのか」
──ふうむ、
 とモグラは目を細めた。
──なるほどな、だったら
 
──だったら私はもうおまえから受け取らない。
 そう言い残し、モグラは地中に潜っていった。
 
 赤みを増した太陽は、無言で地平線に没していった。
(c) Mitsuhiko WAKAHARA