「ではとっておきの一輪をお見せいたしましょう」
そういって貴族は客を案内した。
その鉢植えの前で、客は感嘆した。
「金色をしている!」
「そうです」
その花はつやつやと金色に輝いていた。
「これは一体なんという種類なのですか」
客はわななき訊ねた。貴族は平然と答えた。
「なに、普通のカーネーションですよ」
「そんな馬鹿な! 金色のカーネーションなんて聞いたことがない」
「簡単なことでしてね。これです」
貴族はじょうごを客に見せた。
「この金色の水のみを与えて育てたのです。するとこのような金色の花になる」
「その水は? 絵の具でも溶いたのですか」
「いえ。いろいろ試したのですが、黄銅や鉱石の金色ではこうはならないのです。純金の金粉を用いないとこの色は出ないのです」
客は悔しそうに唸った。
「私にはこの花は育てられないのですね……」