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最後の夏服
少し肌寒い
秋の美術室
空は灰色で
絵の具の匂いがする
『夏服を着るのも
今日で最後だね
来年の今頃は
僕らどうしてるだろう』
君は筆をとめ
それきり黙りこみ
僕は立ちあがり
『行こうか』とだけ言った
ふたり歩いてく
見慣れた通学路
僕の目を滲ませた
降りだした通り雨
雨に濡れた服
透ける君の肩
君の髪は少し
絵の具の匂いがした
(c) Mitsuhiko WAKAHARA