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どこかでみかんが笑ってる
どこかでみかんが笑ってる
夏の近づいた日曜日
あんぱんをひとつ食べながら
にわとりのことを考える
 
遠くの国ではサーカスが
テントをたたんで旅じたく
トロッコ列車に乗ってゆく
悪党の服はタキシード
 
マンモスがほえた平原に
雪がふわふわと舞いおりる
かたむく地球を吹いてゆく
四つの季節にころもがえ
 
目を閉じてくちに放りこむ
アメ玉の色を当ててみる
とどいた楽器を取りにいく
指があすまでに生えそろう
 
   *
 
ただしい博士のなれそめで
フラスコのなかは映写室
手品のとくいな運転手
ネコ語を使って本を書く
 
パンプキンパイを焼くために
種から育てる夢がある
ニッパーで切ったささくれが
湯舟でくるくる回ってる
 
マス目は消せない消しゴムと
Bしか書けないシャープペン
みなれた机のひきだしに
勇者の古墳がふえてゆく
 
暗号を解いた数学者
自信が無いから未発表
メダルがてかてか輝いて
これみよがしにも西に飛ぶ
 
   *
 
かんじきを履いたドラマーが
北の爆弾を止めに行く
勲章をもらう犬がいる
宇宙で浮き輪はやくにたつ
 
遊びを忘れた図書館に
ちいさな小鳥が迷いこむ
シャッターがしまる音がして
こんやのニュースがつやを増す
 
安全装置が多すぎて
発射に時間がかかったら
月は地球から遠ざかり
水星あたりの子に変わる
 
ライオンが駅をかけぬける
コンビの巡査がおいかける
お城の窓辺にほおづえの
王さまは今日もあくびする
 
   *
 
二〇〇人にだけ配られる
宝のありかを示す地図
あたらしい靴にそそぎこむ
白いソックスは無礼もの
 
ざらざらしているアスファルト
歩くサボテンはとげだらけ
いろいろなものと握手する
虹は決断によくにあう
 
選んでカバンに詰めこんだ
基準が今でもわからない
捨てられなかった半券が
整理されるのを拒否してる
 
なにが描がかれている紙も
飛行機にできる指がある
やくそくをひとつ折り曲げる
こんどはキウイを笑わせる
(c) Mitsuhiko WAKAHARA